本部に顔を出した途端リリアに捕まった。どうしたの早かったわね帰還命令 出されたの昨日でしょうすぐに来たのすぐ来たのね少なくとも一週間くらい 猶予を与えられていたでしょうに何があったの話しなさい。と、これが一息で くるのだから堪らない。しかもずっと笑顔なのだ。楽しそうな。微笑み。この 笑顔に騙されているやつは幸せだ。片想いだったショックでさっさと逃げて きちゃった、と適当に言って、最終報告書をいつまでに提出すれば良いか 尋ねる。優秀な彼女らしく、思い出す様子もなく、すらすらと答えてくれた。 帰還してから一週間以内、ね。

「それで、片想いだったってどういうこと?」

「いやほらリリア、俺、報告書を仕上げないと」

「その気になれば三日で終わるでしょ。さぁ聞かせなさい」

ほら、この笑顔だ。見慣れた俺にとっては恐怖以外の何ものも喚起しない 笑顔を見ながら俺は悔やんだ。面白い奴がいると散々メールで話したのが いけなかった。だってまさか、こんな気分で帰ってくるとは思わなかったし。 俺の予定では、あいつと楽しく本気で戦って、遺跡を解放して秘宝を持って 帰ってついでにバディも連れて帰って、リリアに自慢してやるつもりだった。 ほらごらんリリア、これが俺の自慢のバディだよ。そんなふうに。

「・・・・親友だと、思ってたんだけどなぁ・・・・」

ため息とともにそんな思いを吐き出せば、リリアは黙ってココアを持ってきて くれた。懐かしい甘さだ。懐かしい優しさだ。そういえば俺はコーヒーなんか 好きじゃないのに、あそこではそればかり飲んでいた。カレーなんか好きか 嫌いかって言えば好きっていう程度のもんだったのに、あそこではもうほぼ 毎日食っていた。毎食ではなかったけど。その他にもあそこに行く前と今と ではいろいろと俺は変わったところがあるに違いなくて、その変化の裏には ことごとくあいつがいるんだろうと思うと泣きたくなった。



帰って来た変わらない場所。
自覚もなくわってたのは俺自