ボフンと大きな煙が立って、その中に浮かぶのはすっかり見慣れた男の姿。 10年後のランボはオレを見るなり顔をゆがめて、泣いた。

「ちょっとランボ、どうしたんだよ」

「ツナ、ツナ、お願い、ツナ」

この姿のときにツナって呼ばれたのは初めてだなと思いながら、ティッシュを 渡して頭を撫でようとしたが、位置が高くてやりづらかったので上から押して やると、ランボはあっさりしゃがみ込んだ。ティッシュを使いもせず握り込み、 もう片方の手で懐を探る。取り出したのは黒い塊。

「これ、預けるから、1週間以内に俺を、殺して」

「はぁ!?」

目を丸くした俺の手に冷たい塊を押し付けたランボは、突き返される前に煙と 共に消えた。残されたのは人殺しの道具と顔を真っ赤にして目を回している 小さなランボ。

「どうしたんだよランボ」

とりあえず塊をポケットに突っ込んで、小さな子供の両肩を掴んだ。うわ、

「酒くさっ! お前はもー、何やってんの!」

「がははははっ」

うわーダメだこれ完全に酔ってる。とりあえず水でも飲ませてやらなくちゃ、と ランボを脇に抱えて台所へ向かう。それにしても、10年後のランボだってまだ 未成年だって言うのに、そう簡単に酒を飲めるような状況ってどんなだ。まぁ イタリアじゃその辺の事情も違ってるかもしれないけど。


1週間後