いつからだろう、間違われなくなった。 毎朝声をかけてくるハチは、本能的なものなのだろう、間違えたことは なかったけれど、どこか、どちらでもいいと、そう思っているような 節があった。こちらとしても、それでよかったのだ。個など。 けれど、間違われなくなってしまった。 どちらがどちらかなどと疑いもせず間違える他のものからも、はっきり。 最初は偶然だろうと思った。勘が良くなったなぁと茶化すように思った。 しかし、増えていく回数がそれを裏切っていた。ねぇ、ぼくたち、あぁ、 わたしたち、見分けられて、しまったよ。 立ち居振る舞い真似ずとも、同じ顔をして立っているだけで、どちらが 本物の不破雷蔵だろうかと惑わせることができていたのに。 きっと、私が君を、僕がお前を演じれば、ハチや兵助、勘右衛門すらも 欺くことができるのだ。けれどそんなこと、おそろしくってできやしない。 だってそうまでして見破られたら、どうすればいいの。 |