用具委員に新築してもらった飼育小屋のおかげかさくっと委員会活動を 終え、どうせ暇だし今日出た課題でも教わりに行こうと、三郎と雷蔵の 部屋に足を向けた。もしかしたら菓子にもありつけるかもしれないし。
そう期待して開けた障子の向こうは空っぽで、人のいた気配すら残って いなかった。雷蔵は放課後お使いだと言っていたから、今ごろ部屋で 三郎が腐っているだろうと思ったのに。首を傾げ、あぁあるいは雷蔵の お使いに無理矢理(あるいはひっそり)ついて行ったのかもしれない、 それならばとい組の部屋を目指すことにした。何してんだかわからない 火薬委員と不定期活動の学級委員だ、十中八九いるだろう。
そう思って開けた障子の向こうには予想よりも多く人がいた。約一名。 何してんだよ三郎と声をかけたがぴくりともしない。寝てるんだろうか と顔を覗き込むと目は薄く開いている。けれど、開いているだけだった。 部屋に来てからもうずっとこんな調子でさ、と膝を貸している勘ちゃんが からりと笑った。そうだはっちゃんお菓子食べる?俺いま取れないから 兵助に取ってもらってよ、ねえ兵助。ん、なんだはっちゃんどれがいい。 まるでいつもと変わらぬ二人と、いつもと様子の違う三郎の姿は奇妙に 調和していて、なんだか気持ちが悪かった。
おい三郎、不貞寝してないで外出ろよ、せっかくのいい天気なんだ。
声をかけても相変わらず反応しない。目の前で手をひらひらとさせても 眼球が動かない。おいこら魂どこやった。一応呼吸はしているが。
こうなればもう雷蔵が戻るまでこのままだろうよと菓子をつまみながら 課題を教えてもらっていたら、がばっと三郎が飛び起きた。拍子に顎を ぶつけられた勘ちゃんに気持ち程度に謝って、俺の課題を覗き込んで なにやら教え始めたので書き取っていると、ぱたんと障子が開いた。
部屋の中で誰よりも遅く振り返った三郎は、なにもなかったような顔で おかえり、らいぞう、笑った。



雷蔵以外いらないんだ
何もう馬鹿じゃねえの