街が白銀に染まった朝、雪掻き部隊として中庭に出た俺は真っ白い中に 点々と刻まれた足跡、それと何やらしゃがみ込んでいる中佐を発見した。 近づいて手元を覗き込んでみると、小さな雪だるまがいくつも並んでいる。

「何やってんすか」

「ん? いやーもうすぐエリシアちゃんの誕生日だからな? こんな演出は どうかと思ったわけよ」

途端に相好が崩れた中佐はほっといて、雪だるまを眺める。なんか微妙に 歪だ。しかしまぁ、こんなちまいの何個も作ってどうするつもりなんだろう。
どうせならもっとでかいの作りません、うっかりそんなことを呟くと、中佐が 鬼の首を取ったように喜ぶので、俺は手伝いませんよとは言えない空気に なってしまった。

スコップをフル活用して雪を集め、中佐は雪だるま9号(仮)の頭部と胴体を それぞれ転がし成長させていく。ごろりごろりと転がして時々ぎゅっぎゅと 固めている。胴体なんかは既に少佐くらいじゃないと持ち上げれなさそうな ほどに大きくなっている。あれで殴られたら相当ダメージ食らうだろうなとかそんなことを思いながら上着を脱いだ。暑い。雪降った後なのに。

さて。俺たちは顔を見合わせた。少々無計画に作りすぎた気がする。この 胴体とこの頭、どうやって合体させようか。とりあえずやりやすいうちに、と目やら鼻やら口やらつけてみたが、持つ場所が減っただけだった。俺馬に なりましょうかと言ってみれば、人の背中だなんて不安定な場所で、こんな重いものを持ちたくないと返された。まぁそりゃそうだ。実に真っ当だった。 ついでに言うと、逆パターンは直属ではないしそれなりに親しいとはいえ、仮にも上司の背中を踏みつけるのは、ってことで却下。
さて、どうしますかね。
太陽の位置も随分高くなって、このままほっといたら溶けそうだ。

「じゃ、2人でせーのでいくか」

「っすね」

せーの、と声をかけ、パチンという音を聞いた。
次の瞬間、見覚えのある炎で持ち上がった頭が消された。わぁいとっても うでがかるーい。じゃねぇ。

「ロイこらてめぇ!」
「あぶねー! あぶねー!!」

危うく消し炭だよ何すんだこのアホ上司! ぎっと振り向きざま睨みつける と、全く悪びれずに、私をのけ者にして遊ぶからだ、と言い張りやがった。 働けよ。きりきり働いて机をすっきりさせてみろ。ああもう誰かこの29歳児(地位は大佐)をどうにかしてください、主に中尉とか中尉とか中尉とか、 そんなことを思ったけれど、残念なことにいくら待っても冷徹な声と銃声は 聞こえてこなかったので大佐も混ざることになった。9号の反省を踏まえ、 まぁこれなら持ち上げられるだろうというくらいの頭を作った俺たちの思惑を無視して、ごろんごろんと1人で随分楽しそうにばかでかい胴体を大佐が 作りやがったので、結局乗せるのにたいそう苦労することになった。

そんな苦労を重ねて作った雪だるまも10号も、どこぞの上司と違って仕事 熱心な太陽が溶かしてしまって、まぁ、そんな結果だ。


狗もよろこび庭かけ回る