さんこちら、
手の鳴る方へ



はぐれてしまった左門と作を、おぉーいと声を上げて探す。まったく、 どこを彷徨っているんだろう。俺に見つけられた作は、いつも、迷子に なっているのは俺のほうだと照れ隠しに怒鳴るけれど。
       こっち、こっち、
           こっちだよ
赤、青、白、緑、色とりどりの風が呼ぶほうへ道を作りながら歩いて 行く。草を踏み倒して道を作っていると獣にでもなった気分がするが、 こうして呼ぶ声についていけば、作を見つけられたから。今回もまた、 誘われる。早く見つけてやらないと、強がりなあいつが泣いてしまう。
       こっち、こっち、
           こっ
ふ、と風が掻き消えた。どうしたんだろう。とりあえずこっちに進んで 行けばいいんだろうかと踏み出すと、風が騒いだ。今日は変なことが 多い、ぐるりと辺りを見渡すと、暗い森の中に、真白な狐の面がぼうと 浮いている。よく見れば、服の色が森に溶け込んでいるだけだった。
どこへ行くの、狐が問うので、迷子になった作を探しに、どこへ行けば いいのかは、案内がなくなっちゃったのでちょっとわかりませんけど、 そんなふうに答えた。狐が笑ったように見えたのは錯覚だろうか。
じゃあ一緒に帰ろうか、差し伸べられた白い手を、掴んでいいものか 少し迷って、見た目のとおりひんやりした手を、そっと掴んだ。




  手の鳴る方へ
鬼さんこちら、