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いつものようにトイレットペーパーを抱えて走る人の先に、目印のない タコ壺があった。あの人のことだからタコ壺には気づかず嵌るだろうが 最上級生ならこれは避けようとするだろうと足元に苦無を放ってみた。 見事に避けて、そのまま前方のタコ壺に頭から嵌った。ありかよ。 駆け寄って声をかける。すいません忠告のつもりで投げたんですが。 その声は鉢屋かな、くぐもった声が返る。しかしあの勢いこの角度で 落ちておきながらよく首の一つも痛めないな。その辺りはお約束か。 とりあえず足を引っ張って構いませんか。ああ、うん、お願いするよ。 上級生の足を引っ張るというのは字面にするととても嫌な言葉だが、 実際は上級生を助けているのだから妙な具合だ。悔しいことにさほど 力があるわけではない私がようやく先輩を引っ張り上げると、先輩は 全体的に薄汚れていた。いくつかのトイレットペーパーも当然のように タコ壺の中に落ちていたが、先輩に拾わせると面倒になりそうなので 私が拾った。回収したトイレットペーパーをぺっぺっと簡単に叩いて、 じゃあこれ補充してくるから、ありがとうと先輩は手を振り去った。 少々、トイレットペーパーを使う気が失せるような遭遇だった。 ああそうだ食満先輩のところへ行って用具委員会の手伝いをしないと いけないんだった。学級委員長委員会の活動は、学級日誌と掃除と お茶会だけではない。まだ一年生にはあまり手伝わせていないけど 要は学園全体の雑用係のようなものなのだ、わたしたちは。心地よい ぬるま湯のような居場所を守るためならば、扱き使われてやるともさ。 遠くで響いた善法寺先輩の叫び声、今度は無視させてもらうけども。 |