無言での会話(矢羽音というやつだろう、俺はまだ習っていないが)を 続ける先輩二人の前で、俺はじっと座っているしかなくて。そういえば、 ここにはあの風がないんだなと辺りを見回していると、じっとしていろよ と七松先輩に釘を刺された。首をすくめると、先輩の隣に座らされた。 別に居心地が悪いからといって逃げるほど、子供ではないのに。
すっきりしない気分で座っていると、七松先輩がさて帰るぞ、と幾分か 抑えられた声で宣言して、当然のように俺の手を引いた。手首が少し 痛い。いつか越えてやるのだと、その力強さを噛み締める。

図書室を出ると先輩は深く息を吸って吐いて、息が詰まる!と叫んだ。 俺としても先輩が静かだとどうにも落ち着かない。こっちのほうがいい。 三年長屋に向かいながら先輩は、塹壕はだめかぁと呟いた。独り言の 体だったが、らしくもなくしゅんとした声だったので驚いて、思わず否定 してしまった。すると何に驚いたのか先輩も目を丸くして、そうか?、と 聞いてくる。裏山とか裏々山とか、そっちのほうなら用具も埋め直したり しないでしょうから、いいんじゃないですか。そんな適当なことを言うと 思いのほか喜んでもらえたようで、目をきらきらと輝かせた。
三年長屋に向かっていると思ったのにいつの間にか門の前で、ようし、 このままランニングだっ、と言われたのにはさすがに、参ったけれど。


道なき道でも
いけいけどんどん