|
くるりくるりと呼吸のように顔を変える三郎の、今の顔は雷蔵だ。 どんな変装の下にでもその顔を仕込んでいるのかと、あるいは雷蔵に なる道具を常に携帯しているのかと、尋ねてみると三郎は笑った。 これが私の素顔だもの。開き直ったような文句を、笑って言った。 ある日三郎が怪我を負った。背中に受ける傷よりも、顔に受ける傷を 恐れていた三郎が、少なくとも俺の前で初めて、顔に傷を負った。 部位が部位だけに流れ出る血をそのままにしておくわけにいかない。 抵抗する三郎を押さえつけ、見ないから、お前の素顔など見ないから 血止めだけでもさせてくれと叫んで、化けの皮に手をかけた。 べろりとはがれると思われたそれは、何度確認しても、人間の肌で。 三郎は笑った。 これが私の素顔だと言ったろう? 冗談染みた文句を、哀しそうに愛しそうに、笑って言った。 |