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三反田先輩の治療を受けて未だ眠るその顔を眺めていると、さっきの 富松先輩の顔が思い出された。もう遅い。六年間もそばにいて、一等 大事に思われながら、気づかないほうが悪いのだ。 すう、と静かに目を開けた先輩はしばらくぼうっとしていたが、やがて 状況を認めたのか、ちょっと骨折したくらいで大袈裟なんだよ、と口を 尖らせた。その言葉三反田先輩に言ってみたらどうです、言いながら 口先をむにむにと突けば、顔を真っ青にしてお前絶対告げ口すんなよ と口を挟みこまれた。また開きっ放しになっていたらしい。 後輩は、委員会は、数馬は、ぽんぽんと投げられる質問に答えていく 和やかな空気の中で、脳裏にちらつく赤い髪が鬱陶しい。 今の立場に甘んじて、その場所さえ奪われたあなただけれど、ねえ。 ようやく見つけたこの人に、「あれ?」と言われた僕の気持ちなんて。 あなたにはわからないでしょう。 |