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ひゅうひゅうと喉が鳴る。がたがたと手足が震える。そうか、いつもの あれが出てしまったか。 生物として生きる以上呼吸は絶対必要不可欠な活動だというのに、 それすらもろくにできない私は何なのだろう。それにしても、一体なぜ こんな症状が出るのだろうか。ひいひいと短く息を吸って吐いて、いや 厳密には吸うことも吐くこともできてはいないのだけれど、笑えるほど 冷静に思考をめぐらせる。これもある種の慣れだろうか。いやになる。 こわばる体を扱いきれず、小さく丸まったまま伸ばせもしない。あとで 伸びをしたら全身がばきばきと鳴るだろう。 ああ、あたたかい手がほしい。馴染んだ笑顔と体温を思い出すことが なぜか難しくて、そのことがつらかった。 みな出払っている五年長屋。その一室がすぱんと開け放たれた。 善法寺先輩、思わず口に出しかけた名は言葉にならず、ぜいぜいと 呼気だけが漏れる。善法寺先輩は勝手に押入れを開け、取り出した たくさんの布団を私にかけて、飴玉を一つ私の口に放り込んできた。 その布団越しに、背といわず腹といわず足といわず、全身をその手で さすられた。次第にじんわりとからだがあたたくなり、つられるように 呼吸も落ち着いてきた。口を開こうとすると、まだ喋れないはずだよと 諌められる。私本人にさえ分からないこの不具合を、先輩はすっかり 理解しているようだった。それにしても、先輩は背をさすりながら言う。 どうやら過呼吸のようだったから、僕相手で落ち着くもんかなぁと不安 だったけれど、なんだ、案外大丈夫だったなぁ。 ああ、どうして落ち着いてしまったの私の体。 |