らいぞう、らいぞう、幼子が母を呼ぶように縋りつく三郎の背を、母親が 子をあやすように撫ぜる。いつも僕にまとわりついているだとか、スキン シップが過剰だとか思われがちな三郎だけれど、こんなふうにして縋り ついてくることは、実は結構稀だ。そして三郎がこんなふうになるのは 決まって、僕としばらく会っていなかったとき。
こいつに、愛されている自信なら、ある。
おそらく、こいつが世界で一等愛しているのは僕だろう。
そういう、自覚もある。
そうして、僕も三郎が大好きで。だから、僕たちは恋仲で。
だけれど、ねえ、お前が僕に恋をしたことがあったかしら。
羊水のように生温かい、愛情は傾けてくれるけど。
身を焦がすような激しい、恋慕を向けてくれたことはあったかしら。
三郎を放って級友や後輩たちと遊んでも、本を読むからと無視しても、 外出ついでに女を抱いても、趣味の悪い男に誘われても、三郎ときたら 笑って受け入れるばかりで、その態度はまるでただの友人のようだ。
だから、さびしいさびしいと、僕にこうして触れたがるこのときだけが、 三郎に恋われているのだと思える瞬間で、



恋人同士の逢瀬は、
ほんの僅かな時間だけ

溺死ではなく焼死でと願う。どうか僕を許さないで。