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たまにはバレー以外もしようかと言い出した七松先輩のために、用具 倉庫へ向かう途中。後ろから、ぱっと目を覆われた。こんなに綺麗な 気配の消し方は知らない。触られてるっていうのに。 「どこへ?」 その声で、鉢屋先輩だと知れる。用具倉庫へと答えて、目に被さった 手に触れた。七松先輩のような骨太の手ではなく、滝夜叉丸のような 華奢で肉刺の多い手でもない。これは、鉢屋先輩の手ですか、不破 先輩の手ですか。尋ねると、笑いの形に気配がゆれて、さあ、どちら だろうね、と返された。 あの風に惑わされるなと言ったじゃないか。あれは導いてくれるもの ではない。誘い込むものだ。あれに従っちゃあいけない。辿り着けや しないよ。用具倉庫へ行くと言ったね。そこには君の「おともだち」が いるだろう。その顔を思い浮かべて、導かれるのではなく自分の足で まっすぐに歩いてごらん。そうすれば、きっとすぐに辿り着ける。 それこそ風のような声で言った鉢屋先輩は、すと手を離して消えた。 もしかしたら手を離しただけで、本当はすぐ後ろにいるのかもしれない けれど、あんな気配の消し方をされたんじゃわからない。 言われたとおり、作の顔を思いながら用具倉庫へ向かう。 辿り着いた先の作に、お前が行きたい場所に行けるようになるなんて と驚かれ、何があったんだと聞かれたけれど、説明できなかった。 よくわからない人だ。あの人に関わること全て、夢幻にされそうな。 |