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じわじわじわじわ、そこかしこでけたたましく鳴いている蝉の声に暑さを かき立てられる。暑い。暑すぎる。そして、人間誰しもそうだと思うが、 暑いと苛々するもので。俺だって夏は好きでも暑いのが好きなわけじゃ ない。そんなところに蚊の羽音が聞こえてくれば、叩き潰したくもなる。 だからその、両手で蚊を潰しにかかったことを、そんな意外そうな目で 見ないでほしいんだが、次屋よ。あと当たり前のように戸を開けてたが ここは俺の部屋であってお前の部屋じゃあないからな。戸を開ける前に 名札の確認くらいはしような。んで、お前の部屋は、と示そうとしたら、 竹谷先輩も虫とか殺すんですねと当たり前のことを言われた。誤解が ありそうだしこの際言っておくが、俺は別に虫が特別好きってわけじゃ ないんだぞ? 鳴きまくってる蝉だって一匹残らず踏み潰して回りたい くらいだ。あいつら少しも自重しねえ。兵助辺り手伝ってくれそうな気が するんだが誘ってみようか。蝉がいなくなれば勘違いして秋もさっさと 来るんじゃないか。うわマジで実行してえ。大体俺蝉って嫌いなんだよ 中身すっかすかなのに動いてるとか意味わかんねえしうるせえし。 じわじわじわじわ、次屋が戸を開けたまま部屋に行ったせいで、さっき よりも暑さや蝉の声が強くなった気がする。そして、今この部屋の前を ゆっくりと横切って消えたのは、気のせいじゃなければ生物委員会の 虫たちだ。ため息をついて立ち上がる。今日の当番、誰だっけ? |