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切ろうかなぁ、前髪をつまんで三之助が言うから、おう切れ切れ、大分 鬱陶しい長さになってんぞ、と促した。すると、じゃあ、と頭巾を外して 苦無を取り出し、結い上げた根元に苦無を当てようとするものだから、 慌てて制止した。おまっ、何切ろうとしてんだよ。髪。簡潔に返ってくる 答えはその通りで、作も切れって言ったじゃんと続く言葉もその通り。 でも、なんで冬の寒い中でさらに首出そうとすんだよ寒いだろ。 垂れ下がる髪を一房掴んだ三之助は眉をひそめ、だってこれ冷たいしと 言い放った。確かに冷たいけど首に巻きつけときゃあったかいだろと 言いたいところだけど実際に巻きつけたところで外側からどんどん髪が 冷やされるのを俺も知っているからなんとも言えない。でも。 お前、それ、切んなよ。 目も合わせないまま声を絞った俺をどう思ったのか、はぁとため息をつく 音がして、そのあとでえらく不服そうな いいよ が聞こえた。 |