はじめてのしゅくだいは、かんじをなぞること。2ページ。えんぴつが ぼこぼことしずんでしまうからすごくやりづらくて、むうむういいながら やっているから、ちっともきれいになぞれやしない。それでもどうにか おわらせて、できたぞとかおを上げれば、かりかりとなにかかいてた 長次はくるりとふりむいてくれた。つめたかったゆかから体をおこして しゅくだいを見せにいく。わたしをひざの上にもちあげる長次の手は、 いつもつめたくてかさかさだ。わさわさとわたしをなでる長次はなにも 言わないけれど、なんだかすごくうれしくなった。
まっさらなかみを1まい出して、わたしにえんぴつをにぎらせて、その 上に手をかさねた長次は、いっしょにかこう、とひくい声をだした。もう かいたのに。しゅくだいをおわらせたから、また、本をよんでもらえると おもったのに。ぎゅううっとえんぴつをにぎりこむと、かさかさのゆびが ちからのこもったゆびをそろそろとなぜた。ちいさなわたしの手。力を 抜いていていいと長次が言うからそのとおりにした。ふっとえんぴつを はなれかけたわたしの手は、長次の手のなかでえんぴつのところに かえってきた。わたしといっしょに長次がかんじをかいていく。木、川、 大きい、小さい、犬、日、月、火、水、田んぼの田。長次のえんぴつは しずまずに、さらさらとかみの上をすべっていく。ふしぎだ。
ぜんぶのじをかいてから、力はいらないんだと長次は言った。そういう ものかとわたしはおもって、じゃあ長次、本よんで、とふりむいた。




沈んだっていいから