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都会に出て働くようになってから、まず驚いたのは交通量の多さだ。ついでにいうならば走る車の種類も違ったし、信号の数も段違いだ。朝の通勤時間帯など、あれほど縦横無尽に走る電車も満員なのに、どうしてこれほど車が溢れているのかと首を傾げたほどだ。 そんな私も都会人を気取れるほどの時間が経って、横断歩道を探すこともなくなったし、執拗にあたりを見渡さなくなったし、信号を律儀に守ることも少なくなった。周りに合わせた結果だった。 そうして今日もひょいひょいと道路を横断して仕事に向かっていたのだが、ふと、足を止めた。ひとつ向こうの信号を待っている、あれは、小松田くんじゃあないか。いくらか時間に余裕があるし、見つかって向こうから大声で呼びかけられたらいたたまれないしと理由をつけて歩み寄り、やあ、と肩でも叩くべく左手を上げかけたところで、ちょうど青になった信号を守って、彼は行ってしまった。 気配に鈍感なのも大概にしろとか、いくら信号が青でも、曲がってくる自転車とか注意するべきものは多々あるんだから、わき目も振らずに渡るのは危険だろうとか、いろいろ、湧き上がるものはあったけれど、なんとなく声をかけようとして、なんとなく、声をかけそびれてしまった私は、結局、次の青信号をぼうっと待った。 |