はい、あーん。

箱から取り出したアップルパイをまるまま三之助の口元に差し出した。一口でおさまるチョコやクッキー、二口でほおばるロッテのチョコパイ、三口で飲み込んだショートケーキ、18cm型で焼いたこのパイは何口で食べきるだろう。
カットされないその形状に疑問を抱くこともなくなった三之助はあーんと女子らしからぬ大口をあけてパイにかぶりついた。手作りした生地が、かじられたところから、三之助の口の端から、ほろほろと、落ちる。白に近い色をした食べかすは、濃紺のプリーツスカートによく映えた。口の周りをカラメルでべたべたにして、それを舐めとる舌がぐるりと。赤い。
机に掛けてパイを差し出す。椅子に掛けた三之助が下からかぶりつく。嚥下する喉の動きに、ぐしゃりと顔を汚してしまいたくなる衝動が湧き上がるのを感じた。こらえると、口の端がひくりと動く。不恰好な笑みに見えたのだろう。三之助はうまいよと言った。

食事中は、しゃべっちゃいけないんだよ。

絵本に出てくる母親のような微笑みを浮かべて残りのパイを押し込む。もごもごとうごく口から白がこぼれて、あふれた褐色は左手がさらった。
左手のかけらをついばんで、口の周りも指で拭って舐め取る。お行儀が悪い。そうして立ち上がってスカートをはたいて、ごちそうさまでしたと手を合わせて冗談っぽく笑った。床に落ちた白はすくわれない。きっと明日の放課後の、掃除の時間に掃かれて消える。
今度またなにかつくってくるねと笑って、箱をつぶした。




過糖ティータイム