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委員会を終えて部屋に戻ると、先生に呼ばれていた三郎がこちらに 背を向けて横になっていた。起こさないようにそっと障子を閉め、体を うっかり踏みつけないように気をつけながら、三郎の向こう側にある 文机に向かった。きちんと片付いている三郎の机と違って、僕の机には 本が雑多に積まれている。僕一人では一事が万事そんな具合になる だろうから、三郎が同室で良かったなあと思ってみる。 さてどの本から読もうかしらと選んでいると、三郎が身じろぎしたのを 背中で感じた。何とはなしに振り返ると、眠る三郎の顔には狐の面が かかっていた。身じろぎしたせいだろうか、少しずれてしまっている。 春の陽気とはいえ、前掛けだけ着て寝ていては風邪を引くだろうと、 布団の代わりに羽織をかけて、ついでに面も直してやった。 面に触れた一瞬、空気が震えたのは、気のせいではあるまい。 まったく、おまえは何がしたいの、心の中で問いかけながら、上から 三番目の本をそっと抜いて、読み始めた。 |