四年生の春、新しい教室に入った俺は、叫び出しそうになるのをぐっと こらえてそいつに駆け寄った。あいつに記憶はあるだろうか。なけりゃ 人違いだったと詫びればいい話だ。悲しいことに、これまでの十年間で そんな事態にはすっかり慣れてしまった。

「雷蔵?」

ひょっとしたら三郎だろうか。そんな思いもよぎったけれど、多分きっと 雷蔵だ。俺の勘がそう言っている。

「ハチ、だよね?」

申し訳程度の疑問符と裏腹に、その顔には絶対の確信が見えている。 湧き上がる気持ちを抑える気など毛頭なく、感情のままに抱き合った。 ああ久しぶりだ。とてもとても久しぶりだ!
たくさんたくさん人を殺して、それでも人に転生できただけでも奇跡だと いうのに、記憶を持った同胞と同じ時代に生まれ、出会うことができる なんて!
お互い昔とは違う名を持つけれど、違う人生だと分かっているけれど、 雷蔵と、ハチと、それ以外の名で互いを呼ぶ気にはなれなかった。
今までのこと、昔のこと、語り合って、軽い気持ちで尋ねた。

「三郎は?」

雷蔵の隣に三郎がいることなど、林檎が地に落ちるくらい当たり前で。 ともに学び、ともに生き、ともに死んでいった二人なのだから、今度こそ 本物の双子にでも生まれ変わって、同じ顔で笑っていると思ったのだ。 今は姿が見えないけれど、きっと隣のクラスにでもいるのだろうと。
なのに雷蔵はひどくさびしげな、十歳にもならない子供が浮かべていい 表情ではないだろうという笑みを作って、まだ、出会えていないんだと 言った。そうか、と呻くように返すのが精一杯で、いっそ笑うなと言って やることは、とうとうできなかった。




きみにあえてとてもうれしい。

だけどなみだがとまらないの。