鉢屋だ。
生まれてきた赤子を見て、まず思ったことはそれだった。先の世で私が 鉢屋の素顔を見ることは終ぞなかったが、なぜだかわかってしまった。 ただの勘ではないかと、笑わば笑え。だが私の勘は、よく当たる。



「いさっくん、いさっくん!」
ピンポンピンポンと、隣家のチャイムを連打しながら名を呼ぶ。運命の なんと数奇なことか、先の世でよき友人だった善法寺伊作はこの世で 隣人となった。不運は相変わらずで、今もすっ転んだ音がした。
「どうしたの夜中に」
「鉢屋が生まれたぞ、私の弟だ!」
頭にこぶをこしらえてドアを開けたいさっくんに報告すると、目を丸くして 歓声を上げた。すごいじゃない小平太、おめでとう! やっぱり不破の 顔をしていたの? そう尋ねられて私は首を振る。
「あれは多分素顔だ」
いさっくんはますます目を大きくして、へぇえと少しのけぞった。
「鉢屋ならどうやってでも不破の顔で転生すると思ったのに」
「だからつまり、そういうことだろう」
もう前世のように不破の片割れとして生きるつもりはないのだ。今世は 私の弟だ。ああなんと楽しいことか!


見てごらん、私と同じい髪!