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生れ落ちてまず感じたものは、言葉にできないほどの違和感。どうして 隣に三郎がいないのか。どうして一人だけ生まれてしまったのか。心に 穴が空いただとか、そんなありふれたものではなく。三郎、僕の三郎、 どこへ行ってしまったの。まだその顔を、返してもらっていないのに。 さぶろうはどこ、拙い言葉しか発せられない口で両親に聞いてみても、 頭の中のお友達だと思われるだけでまともな返事などありもせず。生き 別れになった兄もなく、盆と正月のたびに親戚中を訪ね回っても三郎は 見つけられなかった。 三郎を探す中で、見知った何人かとすれ違った。性別が変わった人も いたし、年齢だってばらばらで、記憶がある人はむしろ稀だった。その 中で、ハチと再会できたことは大きな喜びだった。それも、僕らがあの 学園に入学したのと同じ頃に。まるで一年生をやり直したような気分に なった。そこに三郎がいない違和感は、拭えなかったけれど。 ハチも一緒に三郎を探してくれた。二人で町中を歩き回ったり、隣町に 行ってみたりもした。隣町の美容院で働いているタカ丸さんの見た目が あまりにも昔のままで驚いた。話しかけてみたら記憶もあって、中身も 昔のままだった。顔の広いタカ丸さんでも、三郎を見ていなかった。 僕とハチは別々の高校を選んだ。一緒にいる時間が減るのはさびしい と言ったけれど、ハチは、三郎は変なところ抜けてるからと少し遠くの 私立に進んだ。僕は行ける範囲で一番規模の大きい、公立に進んだ。 入学式でも、全校集会でも、三郎を見つけることは、できなかった。 |