眠る幹也を抱えたまま新聞を取りに外に出ると、同じようにサンダルを つっかけたいさっくんが出てきた。いさっくんは新聞受けに手を挟まれ ひとしきり痛がった後、幹也くんだっけ、左腕に抱えられた幹也を見た。 そういえば、もうじき三歳になるこの子を、実際に見せたことはなかった と今更思い出す。生まれたと真っ先に報告した相手なのに不思議だ。
「持つか?」
「小平太、せめて抱くかとか・・・・あ、うん、持つでいいや」
一人で百面相をするいさっくんに幹也を差し出すと、私から離れたのが 寒かったのか、受け取ったいさっくんに身を摺り寄せた。昔から子供や 動物に好かれていたものなぁ。たまに鳥に糞を落とされてはいたが。
最初は両腕で抱え込むように持っていたが、慣れてくると片手で持って もう片方の手で支える形に持ち直した。幹也はいさっくんの肩に小さな 頭をうずめている。寝汗で額に少し張り付く、黒い髪。
話をしていると、幹也がびくりと目を覚ました。パニックを起こしたように 目を見開き、体を震わせて腕を突っ張らせている。顔面は蒼白だった。 こんなとき私はどうしたらいいのかわからないからいさっくんに頼もうと すると、幹也に呼ばれた。いやいやとしきりに首を振っている。おにい、 と縋るその体を抱きしめると、幹也はほうっと息を吐いた。両手だけで 覆ってしまえそうな小さな背中を撫ぜてやりながら、起きたら私じゃなく なっていたからびっくりしたのか、と笑ってやると、ふるふると首を振り ゆっくりといさっくんを振り返った。


あのひと、くすりのにおいがする