家に帰ると、樹と幹也が遊んでいた。きゃっきゃと幹也が笑っている。
「いっくん大学は?」
「麻疹が流行ってお休み。ほら、幹也もお帰りって」
「おかえいー」
「お、か、え、り、ね」
「お、か、え、りー」
「そうそう」
「可愛いから直さなくて良かったのに」
真剣に呟くと樹に呆れられた。む。本気だぞ私は。
一年生がそんなんじゃ、馬鹿にされちゃうよといっくんは笑う。
・・・・樹、と。いっくん、と。呼ぶのにも慣れてきたな。いさっくんがいなく なったばかりの頃は、彼の名を呼んではきょとんとされていたけれど。
見た目も変わらないのになぁと覗き込んで、そういえばと思い出す。
「幹也、いつの間にいっくんに懐いたんだ?」
「昔から僕、子供には懐かれるほうだけど」
「知ってるけど、幹也、いっくんに抱かれて泣いたろう」
問えば二人して円らな目で私を見る。いや、泣いたじゃないか。幹也、 薬のにおいがすると、言って。あれ。どうしてまだ、高校受験を控えた 中学生であったいさっくんから、薬のにおいがしたんだ? 医大に通う ようになった今ならば、ともかく。なあ、どうして、鉢屋。
腹が減ったから飯にしようと、幹也をいっくんから引き剥がして、玄関を くぐった。嗅ぎ慣れてしまった洋食の匂いが漂ってくる。今夜は幹也の 好きなビーフシチュー。私も好きなビーフシチュー。


なぜだろう、何かぞわりとする