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弟らしくもなく遠慮を見せる幹也を強引に負ぶり、夕日とは反対方向の 我が家へ帰る。はずかしいよとしきりに言うが、人通りもないような道で 兄に負われることの何が恥ずかしいのか。まだ五歳の子供が。聞く耳 もたない私に幹也は、おもいでしょと問うてきたが、一笑に付した。昔は 委員会活動の帰り、後輩全員を担いで帰ることだってあったのだ。 同年代の、いわゆる現代っ子より体力はあると自負している。それでも 昔に比べれば体力などないに等しい。いっちょう鍛え直すかと思っても この辺りには山もないのだ。登ったり下りたり登ったり下りたりしたい。 平坦なアスファルトやスニーカーにも、慣れてしまってはいるけれど。 ねぇ、おもいでしょってぇ。拗ねたような甘えたような口調は、一体誰に 似たのか。あるいはテレビの影響だろうか。幹也なんか軽い軽いと笑う 私の背中に、あなたはいつもそうやって、そんな声がかけられて。ばっ と振り向いてもそこには何の姿もなく、ただ真っ赤な夕日が落ちていく だけで。振り落とされるとでも思ったのか、きゃああと叫んで私にしがみ ついた幹也が、おにい、どうしたの、足りない舌で聞いてくる。なんでも ないんだと答えながら、幹也が張り付く温かいはずの背中を、ぞくぞくと 何か冷たいものが這い上がってくるのを感じていた。 きょとんとする幹也と二重写しの鉢屋が、最近、遠い。 |