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最近ようやく、というべきか記憶を取り戻した私は、記憶のない間にも 変わらずそばにいた小平太に齟齬、というか、違和感を感じていた。 何者も恐れない。細かいことは気にしない。終わりよければ全てよし。 どころか結果にすら拘泥しない。周りを巻き込んで突っ走るが憎めない ところがある。そんな基本的な性格は変わっていないというのに、全く 信じられないことだが、まるで、そう、何かを恐れているような。 こんなふうになったのはいつからだったか。いや、そもそも、違和感に 気づいていなかっただけで、私が記憶を取り戻したときにはすでにこう ではなかったか? しかし流としてそばにいた身から言うのであれば、 最近までそんな違和感はなかったのだ。 ならば。 あるいは、私が原因、か? 可能性に過ぎないと、笑い飛ばすには妙に説得力のある仮説だった。 「小平太、近々家に邪魔してもかまわないか?」 「なんで?」 「隣人が伊作なんだろう? 会いたいじゃないか」 「ああ、ぜんっぜん変わらないぞいさっくんは!」 「何の業だろうなあの不運は」 「本当だな。この前も靴紐踏んで転んだし、幹也のボールに躓くし、」 「そう、その幹也だ」 「ん?」 「鉢屋なんだろう? それも、素顔の」 ぴくり、と指が震えたのは、見間違いではあるまい。 ああそうだ鉢屋なんだびっくりするだろうまさか私の弟になるなんてな それにしても仙ちゃんにそこまで言ったっけいやいかんいかん嬉しさの あまりまくしたてたんだろうが何を言ったのか全く覚えてないんだあれ 私言ったっけ? ああ、鍵は、鉢屋か。誤魔化すようにまくし立てる小平太に頷きながら 答えを得たのはいいがさてどうしようかと、笑んだ。 |