昔っからそうだけど、シャキンと、昔とは違う細い銀色の鋏を扱いながら 前置きしたタカ丸さんは、ほえほえとした笑顔で言う。鉢屋くんの髪と 不破くんの髪って、やっぱり全然違うよねぇ。そりゃあ地毛と鬘じゃ、と 僕は返したが、タカ丸さんが言いたいことはそれでないと、知っていた。
そういうことじゃなくって、予想通りに否を唱えたタカ丸さんは、いつもと 変わらぬ笑顔で僕の首筋に刃を当てた。鉢屋くんの髪って、ほんと、夢 みたいに理想的だったから。シャキン、冷たい鋏に、襟足を切られる。

「ねえ、不破くんだって、そう思うでしょう?」

鏡越しに笑いかけるタカ丸さんは、流れた時間などほんの数年だったと 勘違いさせるほどに昔のままで、どこか薄ら寒いものを感じる。それが 羨ましいと、思わないでもないけれど。あなたの問いに、答える術など 僕は持たない。だって、ああ、あなたですら見たことがあるというのに!
僕にできることは精々、にこりと笑って、僕は三郎の地毛を見たことが ないのでわかりません、と答えるくらいで。うそだあと笑う彼に、笑みを 返すことしかできなくて。あんなに一緒にいたのに?と問いかける彼の 目は、いっそ僕を責めているようにも見える。

僕は鉢屋くんの髪が大好きでね。たまに手入れをさせてくれるときは、 もう、死ぬなら今がいいと思うくらいだった。だからね、不破くんのことは 正直だいっきらいなんだ。顔を借りる相手が君じゃなければ、たとえば 兵助くんや立花くんだったなら、鉢屋くんはあの髪を、きっと伸ばしたと 思うんだ。だけど鉢屋くんが、君に化けたがるから。

最初に浮かべていた、ほえほえした顔とは全く種類を異にする笑顔で タカ丸さんはそう言って、あの頃の鉢屋くんと同じふうにしてみたけど、 全然似合わないねと、カットクロスを外した。



右手の鋏で何を刻むの