「ひどいんだ仙ちゃんは。中2の頃にやっと私のことを思い出した」
そう言うと仙ちゃんに、思い出したのだからいいだろうがと小突かれた。 まぁ忘れられるよりかはいいけれど、思い出すこともあるという衝撃は どうも、刺さる。
「でも、今になって思い出すことってあるんですね」
2つ年下に生まれてきた竹左ヱ門は、何かを噛み締めるように呟いた。 入学してきたこいつを捕まえて、同じ部活、委員会に入れて監視下に 置いた。それでいて、私の家には決して呼ばないように、また、興味を もたれては困るので、隣人がいさっくんだったこと、記憶をなくしたこと、 どちらも話していない。当然、弟が、幹也が、鉢屋がいることも。
そうだなと頷きながら、笑い出したい気持ちを精一杯押さえつける。
隣の仙ちゃんもそんな私の心境を察しているようで、時折ちらりちらりと 視線をよこす。
言いはしない。何せこいつの後ろには不破がいる。
不破に幹也の存在が知られれば、あいつは私のものでも我が物顔で 奪って行くだろう。それだけなら取り返せばいいが、それを機に幹也が 記憶を取り戻し、あいつを選んでしまったらと、それだけが怖い。
ああ、告げてしまえたらどんなにか愉快だろう。
お前たちが必死で探す鉢屋は、私の手中にある。私の弟だ。あいつが 今生で選んだのは、お前たちではなく私だと、高らかに告げられたら。


世界に見せ付けてやりたい。
だから誰にも見せたくない。