「遠足?」
「そう、土曜日にね。あんた休みでしょ、付き添いお願いね」
「わかった」
小学校とは、こんな半端な時期に遠足なんて行くものだったのか。早く 学校生活、ひいては新しい人間関係に慣れるようにとの配慮だろうか。 そんなことをしても馴染めない奴は馴染めないと思うけれど、まぁ気に しない。幹也がそこに馴染めても、馴染めなくても。密かに後者を願う。

リビングのソファで本(シートン動物記、だ)を読む幹也に呼びかける。 ぱっと振り向いた幹也に、遠足のおやつ買いに行こうか、と言えば目を 輝かせて行くと叫んだ。夕飯を作る母の背に行ってくると声をかけて、 小さく丸い、暖かな手をつないで近所のスーパーへ向かう。
いくらまでなのか聞いてくるのを忘れた、と思ったけれど、買いたいだけ 買わせて適当な量を持って行けばいいか、と投げた。てとてとてとてと 懸命についてくる歩幅は狭くて、つないだ腕も上に伸びている。いっそ 抱き上げたほうが早いのだが、最近はそうすると怒られるからしない。 疲れているときは聞き入れないが。

スーパーに着くタイミングを見計らったように味噌と塩と醤油と料理酒を 買って来いと母からメールが届く。構わないけど後で代金はもらえるん だろうな。お遣い頼まれたから、先におやつ選んでなと背を向けた。
一通り入れた籠を持って幹也を呼ぶと、両手に一つずつおやつを持った 幹也が駆けて来た。店の中で走るんじゃないと注意して、おやつを籠に 入れて手を繋いだ。いっそ籠の中に幹也も入れてしまいたかった。


バナナはおやつにいれません