立ち寄ったスーパーで煎餅でも買おうかと棚を見て回っていると、床に しゃがみ込んで両手のおやつを吟味している子供がいた。俺も昔はよく やったっけと微笑ましく見ていたのは一瞬で、次の瞬間にはハンマーで 頭を殴られたような、がん、という衝撃に襲われた。
だけど、まさか、だってこんな子供が? 髪だって黒い。横顔も、昔とは 似ても似つかない。だけど、だけど。タカ丸さんだって昔とは年が違う。 さらに言えば七松先輩や立花先輩だって。昔と全く同じ姿で生まれて 来た人なんてそれこそタカ丸さんくらいで、現代のこの姿に、昔の姿が かすめて見えるという、それだけが頼りで。

「さ、「幹也ー」

呼びかけようと、絞り出した声はかぶせるような大声にかき消されて。 覚えのある声質と声量に、考えたくもないことばかりが頭を巡る。声に ぴくりと反応した子供は、とうとう選びきれなかったらしいおやつを二つ 手に持って駆け出した。店の中で走るんじゃないという声に、ぱたぱた という軽い足音がぴたりと止んで、てとてとと歩く音に変わった。
見たくない、見たくないと思いながら、できれば勘違いであってくれと、 ああそうでないことなんかわかっているのに!、少しばかり遠い二人を 棚の影からのぞき見る。おやつ二つをあっさり籠に入れて子供を撫でた 七松先輩と、子供が手を繋いでレジに向かう。その後姿を知っている。



誰か、どうか夢だと言ってくれ
さぁどこからを夢にしようか