からりと晴れた土曜日の朝、集合場所に停まった大きなバスに、遠足 とは言っても、全行程を歩くわけではないのだなと改めて実感する。
時代の差、というもの。
少しばかり大きなリュックを背負ってきょろきょろとする幹也がうっかり 転んだりしないように目を配る。せっかく楽しみそうにしていたのだし、 ここで泣かれてはかなわない。
しばらく辺りを見回していた幹也が、母親に添われて歩いてきた子供を 目に留め、にっと悪戯っぽい笑みを浮かべた。その表情のまま駆けて 行こうとする幹也を止めて、とりあえずリュックを預かった。水筒だって 入っているのだ、硬いし重いし転べば怪我もする。
ありがとお兄、笑って背を向けた幹也はもう、弟の顔をしていなかった。 まるで、昔のような顔で。ああそうか、今まで私と同じ年頃の者としか 会っていなかったのだから、私たちの前で弟の顔をするのは当然だ。
そこにきて、自分と同じ年頃の者と接するのだから、私に見せる顔とは 違う顔をするのも、やはり当然だ。
けれど、昔を思わすその顔に、平常心を保つことは難しくて。

「えーすけ!」

そう笑って幹也が駆け寄った子に、ぴたりと重なる影に、私はぐるりと 世界が回ったような感覚を受けた。


その影、名を久々知兵助と言う