おかしい。ここにあったはずの図書室がない。引っ越したんだろうか。 建物ごとごっそりとなくなる引越し技術がこの学園では発達していると みえて、何の連絡もなく引越しが行われることは珍しくなかった。こうも 頻繁に唐突に引っ越されて、みんなは困らないのだろうか。
首を捻っていると、ヘムヘムが手に箒を携えて現れたので、図書室が どこに引っ越したのか尋ねてみた。するとヘムヘムはため息を吐いて、 一人で歩くなとまるで作のようなことを言いながら俺の手を引いて歩き 出した。俺が来た道を引き返すように進むヘムヘムに引っ張られて歩く 途中、森の奥から誘う風、土の中で停滞する何かを目の端にとらえた けれど、努めて見ないようにした。
作は俺じゃなく、まず藤内に言うべきだ。先輩をどうにかしろって。
七松先輩は、掘りっぱなしだからいい。作の言うとおり用具がちゃんと 埋めてくれるし。けれど、あんなふうに中が空洞のまま、上っ面だけを 覆うから、ああやって妙なものが溜まる。六年の善法寺伊作先輩はよく 穴に落ちるけれど、案外あれに呼ばれてるんじゃないかと、思う。
ヘム、という声に顔を上げると、図書室の目の前に着いていた。こんな ところに引っ越して来ていたのか。さすがヘムヘム。学園にある施設が どこに引っ越しても、ちゃんと引越し先を把握してるんだな。
礼を言って、静かに図書室に入った。



あっちこっち
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そっちどっち?
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