図書室に入ると、鉢屋先輩が本の整理をしていた。この前はお世話に なったし挨拶をしておこうと呼びかけると、鉢屋先輩は三年の次屋だね とふんわり笑った。・・・・それほどの面識もないのに言うのもなんだが、 強烈な違和感があった。まるで別人のような。別人?
鉢屋先輩じゃないんですか?
尋ねれば、うん、あいつ大抵僕の顔を使ってるんだ、知らなかった?、 逆に尋ね返された。知っていて当たり前のような顔をしているけれど、 そんなに知れ渡っていることだったんだろうか。鉢屋先輩の存在だって 最近知ったばかりな俺が、同じ顔をした先輩がいるなんてことを知って いるはずがなかった。そんなふうに答えると、名も知らぬ先輩はひどく 複雑な顔をして、今日は本を借りに来たのかい、と話を逸らした。俺は 首を振って、中在家先輩にお願いがありまして、と答える。

中在家先輩ならあちらにいらっしゃるよと指されたほうへ行くと、確かに そこで本を読んでいた。読書の邪魔をしていいんだろうかと思いながら 声をかける。
同級で用具委員の富松から、七松先輩が塹壕を掘るのを止めてくれと 頼まれたのですが、僕の進言では止まる気がしないので、友人である 先輩のほうから言ってみてほしいのです。
中在家先輩は少し黙った後に、ひゅっと息を吐いた。すると七松先輩が 文字通り飛んできて、よ、と普段どおりの大声を出したが中在家先輩に 一睨みされて、んだか長次、と小さく続けたので、やはり、頼む相手は 間違っていなかったとほっとする。そう、ほっとした、だけだ。


あっちこっち
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そっちどっち?
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